3.体験してみよう
沖縄では自然に触れ合えるアクティビティやツアーが多く主催されています。
なかでもおすすめは、自力でマングローブ林を抜けて干潟の生き物に会いに行くカヌーやカヤック。鬱蒼とトンネルの様になった林を抜けていく面白さは、探検家の気分も味わえておすすめです。
2人乗りができるので、小さな子供連れでも一緒に乗れて安心です。小学校の3年生くらいの年齢なら自力で漕げるの楽しいこと間違いなしです。
ただ、時間によってはちょうど潮の満ち引きで流れが反対に変わってしまうことも。流れに逆らってカヌーを漕ぐのは結構大変です。そうなってしまったら、潔く慣れているガイドさんに牽引してもらいましょう。
運良く引き潮の時にツアーを申し込めれば干潟に上陸できるので、たくさんのカニや生き物の姿を見ることができ、ツアーの楽しみも倍増します。
とくにシオマネキは見ているだけでもかなり楽しめます。人の姿を見るといっせいに素早く穴に隠れる警戒心の強さがありますが、ちょっとじっとしているとすぐに何万という数が穴から出てきます。
動いてみせるとまた素早く近くの穴に潜隠れてしまいますが、中には隠れる穴が見つけられなくてオタオタと逃げ回る個体も。面白くてずっと見ていても飽きません。
ガイドの方と一緒に奥まで歩いて花や種子を探したり、幾つかの種類の植物の根の違いを見たりもできます。ガイドさんについて回れば、マングローブの生態について、色々な話を聞くこともでき、よりいっそう興味が湧くことでしょう。
マングローブを守る活動
近年になってさまざまな研究が進み、想像以上に大切な役割や性質が見直されていますが、この先の未来も守っていくために、どんな活動が続けられているのでしょうか。
世界のマングローブ林は年々減少傾向にあり、特にタイやベトナム、インドネシアなどの東南アジア圏ではその割合が顕著です。そこでは日本人が大好きなブラックタイガーやバナメイエビの養殖池を作るために、たくさんの木が伐採されています。
育っている環境はカビやエビといった生物の餌となる有機物の多い土壌なので、養殖池を作るだけで餌をやらずとも数年の間は多くのエビを収穫することができます。
独特な形状の気根は小さな甲殻類たちを大型の魚類などの天敵から守ってくれるので、安心して増える事ができます。
近年では成長するまで時間の掛かるブラックタイガーの代替用として、生産量が多く病気にも強いバナメイエビの養殖量がさらに増加しました。
しかし数年間も同じ養殖池で生産を続けると当然土壌は枯れてきます。そのため次々に伐採されて、新たな養殖池が開拓されています。
日本の国内のマングローブは限られた場所にしか棲息せず、観光業の担い手のひとつということもあって手厚く守られている印象を受けますが、海外では今でもたくさん切り倒されてエビの養殖場などと化しています。
ちなみにそのエビの主な輸出先は日本です。私達は知らず識らずのうちに間接的に伐採に加担していることになっているのも事実といえそうです。
オヒルギやメヒルギと言った比較的広い範囲で棲息している種子や苗木は、本州でも比較的容易に手に入れることができます。
生花店やインテリアショップなどでも売られており、水耕栽培もできるとあって人気もありますが、自然環境で種子島まででしか自生できないオヒルギやメヒルギは、人工栽培でも北海道のような寒い地方では育たない種です。個人で増やすことはできません。
本州では唯一、伊豆や浜名湖で人工植樹されたメヒルギが根付き、繁殖に成功しています。
浜名湖のメヒルギ植樹は、オイスカ高等学校が数十年間取り組んでいるプロジェクト。オイスカ高校ではその他にも山林実習があり、植樹や補林をしながら杉やヒノキを育てています。
また、多くの企業やNGO団体などが力を合わせて、すでに伐採されてしまった土地への植樹活動や土壌の劣化を食い止める対策にも取り組んでいます。
もともとマングローブは、身近に暮らす人間たちに欠かせない生活の木でした。しかし目先の利益に捕らわれたエビの養殖業者や人口加速による不要な伐採により次々と姿を消してしまいました。回復は世界においても重要な課題となっています。
人間の手で失くしたものを、また人の手で取り戻す。それは途方もなく時間の掛かるプロジェクトかも知れません。それでも、今私達に必要なのはもっとよく知ること。知ってみる事によって生まれる興味があります。まずその一歩を踏み出す必要がある、といえそうです。