6.保護活動
それでは、私達は絶滅へと向かっている彼らを助けるためにどんな事をすればよいのでしょうか。私達になにができるのでしょうか。
賛否両論の放流会
日本各地では何十年も前から保護活動が行われています。卵を産みに来る砂地を確保し、産み付けられた卵を保護し、また産まれた子ガメを海にかえすウミガメ放流会というイベントも各地で盛んです。
しかし、この会に近年「待った」が掛けられはじめました。それは、ウミガメを放流するという趣旨のイベントが、本来の生態を無視した人間都合となってしまっているという意見からです。
前述したとおり、ウミガメの子供は、1番天敵に狙われにくい夜間を狙って卵から孵化します。そして、20時間ほどの興奮期(フレンジー)が起こっている間に、できるだけ遠くに行くため持てるだけのエネルギーを使います。
この時期は、いわば卵から孵った子ガメが1番元気に活動できる大事な時期です。
いっぽう、多くの放流会がおこなわれているのは昼間または午前中の遅い時間が多いようです。
卵から孵った子ガメが海に戻ることができず留め置かれてしまうと、数時間の間に活動エネルギーを奪われてしまいます。その結果、子ガメにとって一番大事な生きるためのエネルギーが失われます。
子ガメたちは孵化してから自分の足で砂浜を歩いて海を歩いていくことによって磁場を認識し、いつかまた産まれた浜辺に帰って来るための「地磁力」を身につける事ができるので、波打ち際に放流することは、産まれた浜へ戻ってくる帰巣本能を奪いかねません。
ウミガメの保護は、個人の努力だけでは追いつかない所まで深刻になっているという意見もあります。
保護のためには、産卵場所である砂浜の確保や生態系を破壊するゴミの流出を防ぎ、組織的な協力による保護や活動が必要といえます。
また、それぞれの国や地域に生息している彼らの生態を調査し、よく知る知識も必要です。沖縄とインド洋では異なる独自の分化をしている可能性もあるので、さらなる調査や研究が重要といわれています。
海外での保護活動
日本で行われているウミガメの放流会とは全く別のアプローチとして、海外でも様々な方法で守るプロジェクトが発足されています。その中でも筆者が興味深いと思ったものをご紹介します。
日本では6本入りの缶ビールは紙のパッケージで売られていることが多いですが、海外では、6本のビール缶を6つの穴の空いたプラスチックのリングで上部を止めて売られていることがあります。
ビーチに行って思い切り遊んだ後、ビールを美味しく飲むことが多いのはどこの国でも同じですが、このプラスチックのリングゴミがそのまま海岸に捨て置かれたり、海に流されたりして、生き物たちの驚異となっています。
このプラスチックゴミをウミガメが食べてしまったり、生き物の身体に絡まったりして命を絶たれてしまう事故がいくつか確認されています。
そこで、アメリカのソルトウォーター・ブルワリー(Saltwater Brewery)は、自社のビール工場で廃棄されるされるはずの麦カスを利用して、自然に還る留めリングを開発しました。
こういった問題はもう数十年前から言われており、土に還るバイオプラスチックや海でも分解すると言われる生分解性のものなどが使われてきています。
ですが、生分解性の場合は自然に分解されるには湿度や温度など特定の状況が必要なこともあり、なおも問題視されています。
餌になるとはいえ使い終わったこのリングを故意に海に残すのが良いかどうかは微妙ですが、このようなウミガメの負担を減らせる画期的な発明・動きが全国で広がりつつあります。