2.成り立ちと重要性
どうやって増える?
番組の特集などで、満月の夜にいっせいに産卵する映像を見たことはありますか?
サンゴは雌雄同体の生き物なので、体内で受精した卵を放出する種類と体内で幼生を育ててから放出する種類が存在します。
幼生はプラヌラ幼生と呼ばれています。海の中を漂い、24時間ほどすると岩の上などに付着しそこで成長を始めます。
岩に定着した幼生はポリプと呼ばれるひとつの細胞片のような形をつくり、(花が咲いたように見えるのがひとつのポリプです)分裂を繰り返しながら増えていきます。
大きくなるとテーブル状や枝状、板状などの形になりますが、増えた部分はいわば自身のクローン。種類や環境によって異なりますが、1年で1センチから10センチほどゆっくりとした速度で成長しています。
枝サンゴなどの一部が海流や台風などで折れたり、ポリプの一部が抜け落ちたりして増えることもあります。ちょうど挿し木のような感じで、自身の一部を分裂させて増えていくのはクローンと一緒です。
子宝草は葉の縁にレースのように小さな葉がたくさん付き、その部分が自然に地面に落ちて増殖していきますが、同じような感じです。
沖縄の海を守るために、そのようなサンゴの性質を利用して数を増やすアクアリストや養殖活動も盛んに行われています。
白化問題
近年、浅瀬に生息する、主に珊瑚礁を形成している造礁サンゴの白化が大きな問題として取り上げられることが多くなりました。体験ダイビングで見てご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
彼らはセンシティブな生き物で、生息できる水温の適温は18度から28度ほど。適度に温かい水と十分な栄養を含む濃い塩分濃度の海水が必要です。
ところが、地球温暖化の影響で近年海水の温度が上昇傾向にあり、近年では水温が30度を超える日が続く事がみられるようになってきました。
また、沖縄は台風の通り道で、台風が通り過ぎることによって海水が適度に混ぜ合わされたり、気温が下がることによって水温が下がったりするのが育成に重要な役割を果たしていますが、沖縄を直撃せずにそれてしまう年があります。
そのような自然環境のもたらす変化により、環境ストレスに晒されることになりました。
強い夏の日差しが水中に降り注いだり暑さが続いたりすると、褐虫藻が光合成をできなくなり、栄養を摂取できなくなり体内の褐虫藻を吐き出してしまいます。褐虫藻がいなくなると、わずか5日ほどで白化してしまいます。
白化とは、骨格の部分が見えてきてしまうことをいいます。そして、そのように栄養を摂取できない状態が2週間も続くと、栄養失調になって死んでしまいます。
棲息域の北上も確認されています。以前は住んでいなかった北九州の海にまでも進出し、逆に沖縄地方では白化域が年々増えてきています。
今まで生息していた生き物がいなくなったり、いなかった生き物が増えたりすることがあると、生態系に影響を与えてしまいます。
サンゴは地上の植物と同様に酸素を生成しているので、死んでしまうと役割を果たせずに海の中には二酸化炭素が増え、二酸化炭素が海中に溶け込む海洋酸性化が起こります。
海の中の環境が変わる海洋酸性化が進むと、そこで暮らす生き物たちに悪影響を与えることになります。
温暖化以外の白化の原因としては、集中豪雨による雨水の増加とそれに伴う海水濃度の希釈や、土地開発による土砂の流出などもあげられます。
特に沖縄のやちむん文化を担ってきた赤土には粘土質の成分が含まれるため水に流れやすく、大雨の時には海へ流出して窒息させることがあります。
サンゴの重要性
それでは、なぜ海で生きる生き物たちにサンゴ礁が必要なのでしょうか。
それは、海の中の多くの種類の生物が依存・共存しながら生きているからといえます。
餌にするブダイの仲間のような魚もいれば、隠れ家にしているサンゴガニなどの生物もいます。
沖縄の素晴らしい観光資源のひとつとなっている真っ白な砂や砂浜はサンゴ砂と呼ばれ、もともとは海中で暮らしていた生き物たちの成れの果てです。
また、沖縄の土産物屋の軒先で小さなガラス瓶に入れられてカラーサンドと一緒に詰められている星砂の正体は有孔虫と呼ばれる小さな殻をかぶった単細胞の原生動物です。有孔虫たちは命をかけて子孫を残したあと、死んで文字通り星の砂になるのです。
それから砂の中には長い年月をかけて海で洗われ、砂のように細かく砕かれたサンゴのかけらも混じっています。
ブダイやチョウチョウウオなどは齧ったサンゴを糞として排出します。なまこが吐いて細かくした砂などはサンゴ砂になります。体験ダイビングでも人気を誇る久米島のハテの浜も、その砂が溜まってできた砂の島です。
このように、海には数々の生態系とライフサイクルが成り立ち、海の環境を整えているといえます。
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